ヒミツの恋【短編集】
「真由美…」






どう声をかければいいのかわからない…





名前を呼ぶと真由美はゆっくりと顔をあげて、俺を見つめ…







笑った…








柔らかく…






儚げな…






泣いてるような笑い顔だった…







手には昨日真由美に渡したはずのネクタイが乗っていた…




『渉の笑った顔が好きだったよ…』






真由美はそう言った…






言われた言葉にようやく気付いて真由美の後を追いかけようとする。





『待ってっ!…私なら、簡単に諦めたりしない!…あの子は簡単に諦められるくらいしか渉の事好きじゃなかったのよ!?』





腕を掴まれ、キンキン声でまくし立てられる。







「…黙れよ…」







『…え?』






掴まれた腕を思い切り振りほどき、睨み付ける。






「黙れって言ってるんだよ…。何なんだよお前…ウゼーな。…お前みたいなヤツ誰も好きになんねーよ。」






最低な言葉を発したと思う。けれど今にも泣きそうな顔をして俺を見るその顔が余計俺をいらつかせた。
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