ヒミツの恋【短編集】
部屋に戻って、クローゼットを開けて掛けてある日曜日の為のワンピースと上着を手に取り見つめる。





…夜とか、車から降りても寒くないようにこのジャケットにしたのにな…







そう思うと、悔しくて涙が零れてきた。






コンコン…






控え目にドアをノックしてお母さんが入って来た…






私は背中を向けて、手の甲で涙を拭う。







『裕美…お父さんも悪気はなかったのよ。裕美の為にって…』






「わかってるわよ!」







わかってても納得なんてしたくないの。






お母さんが私へ近寄ってくる気配がした。







『可愛い洋服ね。もしかして日曜日の為の洋服かしら?』







「………。」







『…もしかしてお友達とじゃなくて、誰かとデートだった…?』







「…そうだよ…。初めてのデートだから…。だから…ッ…」
< 163 / 218 >

この作品をシェア

pagetop