二人の距離
「おはようございます。真示先輩」
「髪が乱れているぞ」
「朝の電車の中は嫌です」
「こっちへ来い」

 真示が涼葉の髪に触れて、元に戻してくれた。触れられている間、周囲の人達から視線が集まっているので、涼葉は何度も左右を見ていた。その度に頭を両手で挟まれ、動かないように言われた。
 二人が学校まで歩いているときに真示が後ろを振りかえった。

「どうして距離があるんだ?」
「真示先輩のスピードについて行けません」
「ゆっくりと歩いているだろう?並んで歩くのは嫌なのか?」
「いえ、嫌ではないです」
「じゃあ何?」

 顔を赤くする涼葉の返事を真示は黙って待っていた。
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