あしたのみらい
あんなに孝一くんの事で泣いたんだ。

それなら―。どうか……。

「ただいまぁ」

―ガシャンッ!

「―ッ!?」

わっ。

お父さんが玄関で立ち尽くす私の横を通って外へ出て行った。

大きなボストンバッグを持って……。

大智があとを追う、こちらも大きな荷物を抱えて―。

「お母さん…?どうしたの…」

私は聞きたくなかったけどグチャグチャに荒れたリビングに足を入れる。

そこで泣いているお母さんを見つけた。

激しく泣きじゃくるお母さんを、私は初めて見た。

「大丈夫?」

という声が、なぜか出なかった。

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