あしたのみらい
携帯の電源を切り、2階の部屋に上がる。

愛から貰ったピンクのクマのぬいぐるみに、孝一くんがくれた向日葵のペンダント。

みんな、今となってはただの思い出だ。

何にも代えられない、私のたったひとつの宝物なんだ!



気付けば私の足は、アスファルトを蹴っていた。

伝えなきゃ。

愛との笑いあった時間を、孝一くんとのもう戻れない日々を。

ありがとうなんかじゃ終われない、大切な人とのかけがえのない「時」を!

4月の日差しが、私の決心を邪魔するかのように立ち揺らめいた。

あの時言えなかったと後悔するくらいなら伝えなくちゃ、

いけ、ないの、に―。

みるみるうちに視界が眩み、焼けたアスファルトが目前に迫ってくる。

私は、強く体ごと倒れこんだ。

―それから先の事は、もう何も、思い出せない。
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