あしたのみらい
「う、うーん……」

起き上がった場所は、倒れたアスファルトの上だった。

誰もいない。

視界が再び揺らめき、アスファルトに手をつきながら呼吸を整える。

でも、愛に渡そうと思っていた手紙は、もうなかった。

「あっあれっ……?」

ない。どこにも。

ポケットの中にも、トートの中にも、どこにもない。

ズキンと頭に激痛が走り、私は激しくせき込む。

それをきっかけに、私の頭の中からも、あの手紙の存在が消えた。

書いたことは「事実」として頭の中にあるのに、

何を書いたかが思い出せなかった。

するとみるみるうちに私は思い出せなくなった。

愛と過ごした時間を。

嫌だ。

忘れたくない。失くしたくない。

特筆することのないような他愛もない、思い出。

放課後食べたクレープ。

学食で食べたカレーとうどん。

愛の家で開いたクリスマス会。

二人で行ったスキーも喧嘩になって口を聞かなくなったことも

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