あしたのみらい
バタリとドアの閉まる音がしてから、私は立ちあがる。

ふらふらと2階に上がると見慣れた部屋のドアがある。

ここで創られた愛との思い出も、私には、思い出す権利もない―。

「……っ」

埃をかぶったフローリングに一粒、また一粒と、涙が滴り落ちていく。

私は藁にもすがる思いで、泣きながら部屋を漁った。

何か、一つでもいい。

愛が、私の隣にいたことを、私の横で見せたあの笑顔を、

思い出したかった。

「…あった…っ」

私が見つけたのは、ピンクの表紙をした、日記だった。

すぐにページをめくる。

『8月26日、金曜日。

 夏休み、帰省していた愛が帰ってくるので、空港まで行った。

 内緒にしていたので愛はとても驚いていたけど、久しぶりに遊べて楽しかった。

愛、これからもよろしくね!大人になっても親友だよ!』

日記がどんどん濡れていく。

私は、どうして気付けなかったんだろう。

びしょびしょになった日記を破かないように閉じた。



< 145 / 147 >

この作品をシェア

pagetop