RAMS
第1章 いつもの日常
プロローグ 1
~プロローグ~
雨の降る夜だった。
ようやく蕾をつけ始めた桜の木が雨に打たれて、風に吹かれて揺れていた。
明かりの灯った窓から歌声が聞こえていた。
少女はその曲を知っていた。
一体誰が歌っているんだろう。
考えたが思い当たる人物はいない。
でも、一見か弱そうなその声は力強く、懐かしく、なんだか自然と心があったかくなった。
少女が立ち去った後、桜の気がさみしげに影をアスファルトの上に落としていた。
少女はその出来事を忘れてしまっていた。
まるで儚くておぼろげな夢の1部のように...