天使たちの過ごした日々【神前悧羅学院】


「彩紫、明日中に他の二校の情報を集めて欲しいんだけど」



突然、紫がそう言った。


他の二校と言うのも勿論、神前悧羅学院のことだ。


神前悧羅学院は三校から成り立っている。

俺たちが通う昂耀校。
幼稚園から大学院までの20年間一貫教育の全寮制男子校。

その昔は昂耀男子学園として81年間運営。

そして新システムを導入するために神前悧羅学院に改名。

その後は都心部の悧羅校・海を一望できる湾岸部の海神校を創設の折、
俺たちの学校は神前悧羅学院昂耀校と改名された。


よって昂耀校の歴史は学院創設の時代から始まっていると言っても過言ではない。

紫が言ったほかの二校とは他でもない姉妹校の悧羅校と海神校のことだ。


悧羅は男女校舎別共学制で海神校は共学制の学校だ。


だが現在、その二校には生徒総会システムはない。
昂耀の生徒総会が学院全てを担っている状態が続いている。



「OK。
 なら明日、俺が二校の様子を視察してくる。

 明日からは草薙さんの謹慎もとける。
 元秘書官さまにも協力して貰うさ」

「うん」

「紫の方はどうする?」

「……そうだね……。
 本当は一緒に彩紫についていきたい気分なんだけど最高総だから出来ないね。

 私の出来ることを静かに考えるよ」


そう語る、紫の声は覇気がなくて。


それでも俺は『視察に一緒に行くか』なんてことはいえるわけもなく。



……ただ……かける言葉すら思いつかないままに
時間だけが流れていく。



「彩紫、一度生徒総会の親睦を深めるためにお花見でもしようか」

「あぁ、わかったよ。花見だな。
 全部セッティングしておいてやるよ」

「……うん……」


去年までの紫はもっと自分のやりたいことを積極的に行うヤツだった。


去年も総代を勤めていたが総代の身分は最高総ほど拘束されない。


紫は同級生やクラスメイトと積極的にコミュニケーションをとり、
彼らが望む要望を的確に叶えながら采配を振るっていた。
< 10 / 60 >

この作品をシェア

pagetop