天使たちの過ごした日々【神前悧羅学院】
「紫蓮はどう思ってるの?
紫と彩紫のことは?」
「オレもアイツラの実力は認めている。
オレ自身の心の整理がついていないだけだ。
今日、彩紫と海神・神前校の視察へと行ってきた。
初めて彩紫とじっくりと話し合ったよ。
アイツもオレと同人種らしいことは良くわかった。
……だが……」
「ふふっ、同じ匂いを感じるからこそ、
相容れないものもあるって?」
「まっ、そう言うことだ」
「悧羅と海神の方は?」
「そうだな。
昨年より統制がとれなくなってきているみたいだ。
やはり昂耀の生徒総会のみで三校を管理し手本として導くのには
限界がある。
悧羅校では入学式からまだそれほど時間がたっていないのに、
すでに退学者が出ている始末だ。
一年生と言えばまだ幼稚園だぞ。
両親に強制され、競争率が高い入試で揉まれようやく辿りついた新しい世界。
その世界に馴染めぬ者。
入学した途端に不適格者のレッテルを貼られる生徒たち。
たかが20年間の学院生活で何が出来る。
その20年が……全ての運命を握る原点だと学院は叩き込むが」
「そっ、そうだね」
紫蓮の感情的な報告を真摯に受け止めながら聴いている最中、
僕は胸の痛みを感じ始め、その場にうずくまるように倒れこむ。
……呼吸が出来ない……。
荒く何度も息を吸おうとしながらスムーズに
息を吸い込めない僕。
脈が波打つように速くなり、
次第に僕の体から力を奪っていく。
「紫綺っ!!」
紫蓮の悲鳴にも似た声が僕の名を呼び、
紫蓮の指先が僕の手首に触れる。
「いつものヤツだな。
今、薬とってきてやる。
もう少し我慢してろよ」
そういい残すと紫蓮の足音が僕の傍から遠のいていく。
遠のいた足音はすぐに近づき、
紫蓮に抱きかかえられる形で薬を服薬する。