天使たちの過ごした日々【神前悧羅学院】
あれから十七年。
オレは紫綺だけを見つめて生きてきた。
そんなオレを見て紫綺は何度も言った。
『……紫蓮……、紫蓮は間違ってるよ。
紫蓮は僕のモノでも何でもないよ。
僕より先にご飯も食べていいし、僕より先に眠ってもいい。
紫蓮は僕の家来とかじゃなくて僕の大切な友達だよ。
大事な人だから。
もうそんなことしなくていいから』
何度も何度も紫綺はオレにその言葉を繰り返した。
だがオレはその度に、その言葉を否定し続けた。
アイツと共にこれまで同じ時を過ごして……わかったんだ……。
オレの生命は生まれる前から、
紫綺のモノなのだと確信することが出来たから。
紫綺の夢はオレの夢。
紫綺の願いはオレの願い。
自ら神前に革命を起こしたいのだと語った紫綺。
オレも紫綺の傍で、紫綺が采配を振る瞬間を楽しみに待ち続けた。
それから……五年後の昨年……紫綺は名誉ある学院最高総に就任。
見事な采配を振るった。
だが……その時、神前に新たな風が吹き抜けることはなかった。
最高総就任から……半年後。
紫綺は心労と過労で倒れた。
孤独な最高総の時間との闘い。
その過酷な自分自身との戦いは紫綺の心を蝕み、
体をも蝕んでいた。
検査の結果、特発性心筋症と診断された。
心筋が弱り、血液を有効に
送り出せなくなる病気なのだと説明を受けた。
発症の原因は医師も良くわからないらしいが、
過度なストレス・貧血・そして栄養不良かも知れないと告げられた。
最高総に就任以来、紫綺の食が
日に日にが細くなり思うように摂れなくなったのもオレは知っている。
医師が入院を勧めた時期もあったが、
紫綺はそれを断り神前悧羅学院の最高総としての時間を精一杯努め続けた。
誰にも自分自身が病を発病していることを気づかれずに。
そして……この春休み……医師は告げた。