天使たちの過ごした日々【神前悧羅学院】
生徒総会のメンバーが纏まらずして、
革命の成就は有り得ない。
真に生徒総会が学院の代表であり、
学院生徒を導くものとなるのならば私たちは
このような高みで下界を見下ろしていてはいけないのだ。
いやっ現実は天界に閉じ込められた私たちを、
皆が……面白おかしく見続けているだけなのかも知れない。
そんな今の在り方が、この先も異を唱えるもの
一人ないままに続けられていいわけがない。
「はい」
静かに彩紫が手を上げて立ち上がる。
「最高総秘書」
「最高総の質問に答えます。
私は今の現状を良しと感じません。
神前には古くから重んじられている
大切な誇りがあり歴史があります。
だが……何時までもその小さな柵に
閉じ込められ続けるわけには行かない。
良いものを残し、悪しきを廃し新しい学院運営を
提案します」
誰も答えるものがなかった私の問いを、
彩紫は自分の言葉で思いを伝えてくれる。
ずっと抱き続けていた彩紫自身の思いを
……何時かは……神前に革命を……。
互いに語り続けてきた小さな灯火の思いを。
「はい」
静かに紫綺さまが手を上げる。
「KING」
「最高総秘書のお言葉に私も賛同いたします。
私自身、昨年も同じ提案を行いました。
私の時は惜しくも進言が通ずることは
叶いませんでしたがこの場をお借りして再度申し上げます。
……神前に新しい風を……」
穏やかでありながら意思の強さを告げる口調で
語り終えた紫綺さまは、静かにその場に着席した。
「幼等部総代、何か意見はあるか?」
「わたしは最高総についていきます」
「初等部総代は?」
「わたしも最高総のお言葉ならば
反対する術もありません」
「中等部総代は?」
「最高総のお言葉に何処までも従います」
草薙さんに名前を呼ばれたそれぞれの代表は、
あたりまえのように私に従うと答え続ける。
それが私の質問に対する答えにならないことすら
気がつかぬままに。
神前のシステムは上の言葉には絶対服従的な意図がある。
そして……そのシステムが、
下級生自身の意識を意図的に抑圧し閉塞させている傾向がある。
それが明らかに出た結果だった。
今のままではいけない。
「伊集院議会書記」
次に紫音が指名された。
紫音はゆっくりと立ち上がった。