天使たちの過ごした日々【神前悧羅学院】
私が感じた敗北感と挫折の真っ暗な時間を。
今も私を包み込む、その真っ暗な闇の中に
飲み込まれてしまう前に……光を……。
この学院が、光の元に降り立つための架け橋となれるなら、
残り少ない私の命など奪われても惜しくない。
それが……新しく生まれ変わるこの学院の礎として糧となれるのなら。
言葉に出来ない覚悟は今も秘めたまま。
岸本医師の視線をゆっくりと捉えると無言で緩やかに微笑みかけた。
ふいに箏の音色が学院内に響いて、
授業の終わりを告げた。
「おいっ」
授業の終わりを告げて一分もたたずして、
医務室のドアが一気に開かれる。
姿を見せたのは紫蓮。
紫蓮は崩れた制服も気にかけることなく、
ベッドサイドへと駆け寄ってきた。
「紫綺っ!!」
ベッドサイドで、肩で息をしながら呼吸を整える
紫蓮にゆっくりと微笑み返す。
「紫綺、何笑ってやがる」
今も険しい顔をしたまま私に怒鳴りかける紫蓮。
「……紫蓮……眉間に皺が寄ってますよ」
そんなことが言いたいわけじゃないのに、
紫蓮の優しさに答える術は……この一言しか紡げなかった。
紫蓮と居る時間はありのままの私になれる。
嘘偽りない、ただ一人の私として、
そこに存在できる。
「紫綺……おまえなぁ……」
紫蓮は小さく呟くと溜息を吐き出して、
ベッドサイドに腰掛けた。
「なんだ……その……無理しすぎだ。
紫綺、お前に何かあればオレはどう申し開きすればいい?
いやっ……違う。
オレ自身は一体どうしたらいい?
頼む……無理はしないでくれ」
紫蓮の真っ直ぐな言葉は、
私の心に突き刺さるように刻まれていく。