天使たちの過ごした日々【神前悧羅学院】



液晶に表示された名前は、草薙紫蓮。


「彩紫、紫蓮さまからだ」


同時に彩紫の携帯を鳴らすのは紫音。


二人それぞれの携帯を手に取って
視線を合わせると、互いにゆっくりと受話ボタンを押す。



「はい、綾音です。
 最高総……いやっ、今は違うな。

 紫、有難う。

 今、紫綺が覚醒した。
 紫綺は助かった」

「おめでとうございます。
 紫蓮さま」



お互い、紫綺さまの覚醒の一報を受けて車内で二人、
それぞれの掌と掌をあわせるように二人一緒に打ち鳴らす。


『坊ちゃま、病院に到着しました』


運転手の声と共に停車するリムジン。
その扉を開け放つと院内へと駆け込んでいく。



特別棟に向かう足取りも軽い。
手術のあの日から、何度も何度も足を運んだ通いなれた場所。


手術は成功した物の、目覚めぬ時間が長かった。
そんな長い長い夜が開けた。



病室の前でドアをノックすると「どうぞ」っと紫蓮さまの声が聞こえる。



「紫綺さま、紫蓮さま、それに紫音。

 HBW制度、承認されました。
 昂燿校は、近日中に試験導入。

 海神と悧羅校は、三学期より試験導入。
 春より、正式に導入されることとなりました。

 それと同時に、生徒会の設立も決定しました。

 これまで通り、理事会が選出する学院の代表生でもある生徒総会。
 生徒総会が司る役割は、学院行事・学院運営。

 生徒の教師によって選出されるのは生徒会。
 生徒会は学校行事を中心に担い、生徒と生徒総会の架け橋となる役割を担うことになります」



紫蓮さまは、紫綺さまの手を静かにとって
嬉し涙を静かに流した。



「草薙さん、紫綺さま忙しくなりますよ。

 紫は、この先どんどんと学院を変革させていきます。
 
 紫綺さまにも、草薙さんにも紫音にも、
 どんどん手伝って貰わないと二人じゃ裁ききれない。

 コイツ、顔に似合わず人使い荒いんだよ」 


そんな笑いが木霊した病室。

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