あの加藤とあの課長
「私的には、長じゃなくなったことの方が嫌ですね。」



昇格したって言ったって、補佐だもん。



「私は長でいたかったです。」



半年しか味わえなかった、係長の座。昇格は嬉しいけれど、少し惜しかった。

課長は一瞬驚いた。


かと思ったら、気難しげな表情をしながら右手で口許を覆う。



「晋ちゃんは嬉しそうでしたけどね。」

「今泉か…。」



車は会社の地下駐車場へと入っていく。

会社を出た頃には明るかったはずが、今ではもう暗くなりつつある。



「あ、そうだ。」



車を降りる前に思い出して、課長に向き直る。



「今度、私と晋ちゃんの昇格祝いも兼ねて、新入社員の歓迎会をするそうです。」

「…へぇ。」

「出席、しますよね?」



いつも参加しない課長だけど、こればっかりは参加するだろう。

なんせ、彼女の歓迎会だ。



「……あぁ。」



その返事を聞いて、また私はニヤリと笑った。
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