あの加藤とあの課長
「あ、お風呂入ってきたんですけど、生渕さんもどうですか? 気持ち良いですよ。」



緩んだ顔のまま言うと、生渕さんは意地悪く笑った。



「年寄り臭いぞ。」

「別にいいですー、あれは格別なので。」



ベーっと、舌を出しながら言うと、穏やかに笑った彼に頭をワシャワシャと撫でられた。



「もうすぐ朝食だ、準備してこい。」

「はい。…江藤くん、まだいたらどうしよう。」



そう苦笑いすると、生渕さんも苦笑いした。

そんなの気まずすぎる。



「…浴衣のまま行くか?」

「んー、眼鏡かけたら誤魔化せるしそうしようかな。」



そう言って持っていた伊達眼鏡をかけると、生渕さんが浅く頷いたのが分かった。



「正直嫌だけどな。」

「え?」

「浴衣のお前も、素っぴんのお前も。」



指の背で私の頬を撫でる生渕さん。



「他の奴に見せたくない。」



はいきました、ズキューンと。

出張以来、生渕さんは甘すぎる。甘々中の甘々だ。


昨日からはさらに甘くて、対応に困る。



「胸焼けしそうです…。」

「は?」

「なんでもないです。」
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