あの加藤とあの課長
「私の男関係、知ってるでしょ?」

「ある程度はね。」



繋がりの多い敏ちゃんのことだ、口でそう言ってはいても、情報量はかなりのものだろう。



「体だけの関係に終わるか、付き合ったとして好かれることなく終わるか。」



それなりに割り切って、それでいてけじめをつけながらやってきたつもりだけど。

思い返すと、節操のなさにも程がある。



「晋ちゃんはその1人になるんじゃなくて、友達としていることを選んだの。」

「ふーん。」



友達ならば、友達の域を越えることは決してなくとも、確実に側にいれる。

たぶん、そういう考え。



「随分とよく分かるのねぇ?」



訝しげに私を見る敏ちゃんに、私は肩をすくめてみせた。



「何回かあるからね、そう言われたこと。」

「あの子に?」

「ううん、他の男。でも皆、結局我慢できなかったーって。」



何度言われたか知れないこの言葉。

向こうが望むなら友達でいい。向こうがその先を望むのなら、それでも別に構わない。


私は、されるがまま。



「アンタって、なんか川みたいね。」

「川?」

「流されるまま。あ、なんかトイレみたいね。」

「それは勘弁してよ…。」

「まぁ、たまにはメダカにでもなってみたら?」



飲み終えたコーヒーの缶をゴミ箱に捨てた敏ちゃんは、そのまま私に背を向けて歩き出した。

(……メダカ?)
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