あの加藤とあの課長
「お待たせしましたー!」



待ち合わせのロビーへ行くと、明らさまに嫌そうな顔をしている生渕さんがいた。



「どうしたんですか、そんなに不機嫌そうな顔をして…。」



別に遅刻をしたわけでもないし、特に機嫌を損ねるようなことをした記憶もない。

訳が分からず首を捻ると、生渕さんは溜め息を吐いた。



「俺はお前と2人がよかった。」

「…ふ、ふふ。」



思わず笑いが零れた。


これから近場の観光地をぶらぶらする予定で、晋ちゃんと敏ちゃんも一緒に行くことになっているのだが。

承諾して正解だったかもしれない。


(だって生渕さんなんか可愛いし。)



「…お前、本当に無防備と見せかけた完全防備だな。」



と私の格好を下から上へと眺める。

タンクトップにスキニー。足元はぺったんこのサンダル。ラフにしたつもりなんだけど。



「完全防備なつもりは。」



でもまぁ…、増田ちゃんの服装と比べると隙はないかもなー。

(しかもラフ…。)


もう少し気合い入れてくるべきだったかな。



「源ー、陽萌ー!」



そのとき、私たちを呼ぶ声がして振り返って…、私は目をパチクリさせてしまった。
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