あの加藤とあの課長
「…敏ちゃん?」

「あ、陽萌には初披露ねー、どうどう?」



くるくると回る敏ちゃんに伴って、ふんわりと広がるスカートの裾と、揺れる巻き髪。

ふふんと笑う敏ちゃんの顔に施された化粧。



「えっ、普通に超可愛い!」

「ありがとー!」



男にしてはナヨい印象を受ける敏ちゃんだけど、それは男性物のスーツを着ているときの話で。

こうして女物の服を着ると華奢な印象が強い。



「女として負けた気分…。」

「そんなことないのに、何言ってんのよアンタ!」



それから晋ちゃんも合流して、4人で旅館をあとにした。

アウトレットと、お土産屋さんが立ち並ぶ大通りを回ることになったものの。



「運動不足解消よ!」



とか言った敏ちゃんのおかげで、移動は限界まで歩きになった。

山の中にあって避暑地には最適なこの場所だから、涼しくて歩けなくはない。



「…どうした?」



歩けなくはないんだけど。

隣を歩く生渕さんに引っ付きながら歩いていると、怪訝そうな声が降ってきた。
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