あの加藤とあの課長
旅館に戻り部屋でくつろいでいると、どうしても溜め息が出る。



「意外って…。」



何回言われたかな。生渕さんにだけじゃない、今までに、だ。


勝手にイメージを持たれて、意外がられて、失望されて。

生渕さんも、失望したのかな。


今までは失望されようが別に構わなかった。私には別に関係ないと思ってきた。

でも、生渕さんは違う。


(なんかヤダ…。)


そのとき、インターホンが鳴り響いた。

増田ちゃんだと思い込んで確認もせずにドアを開くと、そこにいたのは予想だにしなかった人。



「生渕さん…。」

「旅館だからって確認しないで開けるな。」

「で、どうしたんですか?」



目の前の生渕さんに問うと、彼は「聞けよ。」と呟いてから言った。



「今1人か? 増田は?」

「あ、今日は戻ってこないそうです。」



そうだった。戻ってこないんだった。



「…なら。」

「?」

「俺の部屋に来るか、どうせ宴会まであと数時間暇だろ。」

「……あ、露天風呂!」



ついてるのは課長以上の人の部屋だけ。



「お風呂入りに行きます!」



そう笑った私に、彼は苦笑した。
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