あの加藤とあの課長
「加藤さーん、呑んでるーう?」

「はい、呑んでますよー。」



晋ちゃんに誰この人と目配せすると、彼も肩をすくめるばかり。



「あ、俺、宣伝部の金田っていうんだけどね、2人の1つ先輩ー。」

「あ、そうなんですかー。」



わざわざなんてご丁寧な自己紹介。



「はいはいどうぞー。」



私のグラスにドバドバとビールを注いで、自分も機嫌良くグラスを空けた。

何この量。無理。



「えーっ、何金田加藤さんと呑んでんだよー、ずりーよー!」



金田さんの知り合いと思われるその人の一声を機に、ワラワラと集まってくる男性社員。

晋ちゃんはいつの間にか弾き出されてるし。



「あ、あの。」



気付けばかなりの人数に囲まれてるし。

(助けてーっ。)


思わず生渕さんを探してしまう。

やっと見つけた生渕さんは隅の方で綺麗所に囲まれて、重役とお酒を呑んでいた。


もう、いいよなんでも。

ヤケクソでグラスに入ったビールを一気に呑むと、周りからは歓声が上がる。



「加藤ちゃん呑むねー!」

「いいねいいね! はいビール!」



注がれるままに呑んでいたら、一瞬で酔った。
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