あの加藤とあの課長
「意外なんて言ってさ、きっと冷めたんでしょ? だから私のことどうでもいいんでしょ?」



だんだん心の声が漏れていく。



「なーに? 彼氏の話ー?」

「もう知りませんあんな人ー。」



隣に座っていた人にそう言うと、周りから上がる歓声。

「別れちゃえ」とか「もっと言ってやれ」だのなんだと声が飛び交う。


なんか、だんだん悲しくなってきた。

じわりと涙が滲んだそのとき、強い力で肩を抱かれ、そのまま立たされた。



「俺、今から告白しまっす!」



誰かと確認すると、先ほどの金田さんで。

この腕を振りほどいて、今すぐ生渕さんの所に行きたいのに。


(お酒回って体動かない…。)



「俺、初めて見たときから、ずっと好きでした!」



やだ。止めてよ。



「俺と付き合ってくださいっ。」



そう言いながらも私の返事を聞く素振りなんて見せず、それどころか顔を近づけてくる。

キス、される…。


頭では分かっていても、やはり体が動かなくて。私にはどうしようもなくて。


(生渕さん…。)



「や…。」



やっと絞り出した声は呆気なく掻き消えた。
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