あの加藤とあの課長
堪らず身を捩ると、そっとそのまま横たえられる。唇が離れて、私を見下ろす生渕さんと視線が交わる。

この状況になって、やっとここが生渕さんの部屋だと気付いた。



「お前は…、俺の理性を飛ばす気か。」



私に跨がるようにしておきながら、苦笑してそんなことを言う。



「もう少し余裕ぶらせてくれよ。」

「足りない…。」



そう呟くと、生渕さんは溜め息を吐く。



「溜め息吐くと、幸せ逃げるんですよ。」



と言えば、彼は幸せそうに笑うばかりで。



「逃がしておかないと、幸せで狂いそうだ。」

「ふ、ふふ。」



そうやって笑っているうち、眠気が襲ってきた。横になっていたのがダメだったらしい。



「…陽萌? おい、陽萌!」



私は笑いながら、そのまま意識を手放した。
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