あの加藤とあの課長
「あっ、そっち、呑んでるー?」



と思わず後輩の方へと逃げた。



「なんですかあれ。」



私が隣に座ると、晋ちゃんたちをしかめっ面で見つめながら増田さんが呟いた。

そりゃ呆れるというか、驚くよね。
でも彼女の場合、1番面白くないのは…



「まあ、誰かが憎まれ役にならないとね。」



増田さんのグラスに自分のグラスを合わせると、増田さんは驚きながら私を見た。

あれ、もしかして隠してた……?



「課長に聞いたの。」



そう笑顔を向けると、増田さんは複雑そうに顔を背けた。



「でもまあ、課長は特別だよね。」

「え?」

「聞いてなって。」



烏龍茶をちびちびしながら先輩方の口に耳を傾けていると、「でもさぁ」と誰かが言った。



「あんな風にどっしり構えててくれるから安心して仕事できるんだよな。」

「俺が責任とるって言われたとき惚れそうになった。」

「やること言うこと間違いないしな。」

「的射てるし、何より仕事できるし。」



気付けば愚痴大会だったはずが、課長を称える会になっていた。



「ほらねっ?」



増田さんに笑いかけると、彼女はどこか嬉しそうに顔を綻ばせた。

やっぱり、好きな人を誉められるって嬉しいよね。



「あ、そうだ、増田ちゃん!」

「なんですか?」



増田ちゃん? と首を傾げながら返事をする彼女に抱きつくと、彼女は体を固くした。



「これからよろしくねー!」

「……はぁ。」



かなり困惑している様だけれど、そんなの気にしない。
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