あの加藤とあの課長
「どちらにせよ、アタシの知る限り、秘書課以外で声がかかったのは陽萌が初めてよ。」

「…どうすればいいの…?」

「とりあえずは誘いに乗らないこと。アタシも調べてみるけど、なんとか避け続けなさい。いいわね?」



足を組むと、敏ちゃんは顎に手を当ててうーんと考え込んでしまった。



「ごめんね、敏ちゃん。面倒事もってきちゃって。」



そう言うと、ふと顔を上げて、ふっと笑った。



「いいのよ、陽萌はアタシのお気に入りなんだから。源が溺愛中の彼女だしねー。」

「敏ちゃん…。」

「なーによ、水臭いじゃない! アタシたち友達でしょー?」

「そうなの!?」



心底驚いた顔をしていたと思う。

そんな私の反応を見て、敏ちゃんは口を尖らせた。



「何よ、そう思ってたのはアタシだけー?」

「と、友達でいいの!?」

「当たり前よ。他に何があんのよ。」

「う、ううん、ない!」



嬉しくて嬉しくて、うっすらと涙が滲んでしまったほど。

笑いながらも、今にも涙が零れ落ちそうで、それを隠すことも兼ねて、敏ちゃんにギューッと抱きついた。



「ちょっと、アタシ一応男よ?」



なんて言いながら、よしよしと頭を撫でてくれた。
< 134 / 474 >

この作品をシェア

pagetop