あの加藤とあの課長
「呑んじゃったんです、緊張しちゃって。そしたら…、流れ、ですかね。」



小さくなりながら、最後の方は消え入るように言うと、生渕さんは私の両肩を掴んだ。



「他は…?」

「え…。」

「本間さんだけなはずないだろ。」

「あの、えと、覚えてないんですけど、結構…。」



いますとは、言えなかった。



「…他は。」

「他?」

「接待以外だ。」



それこそ、覚えてない。



「3桁、は、いかないと思います。」



そう恐る恐る言うと、生渕さんは私の肩に目を押し当てるように頭を乗せた。



「…俺は、今さらお前の過去に、どうこう言う気はない。俺も人のことは言えないからな。」



そのまま抱き締められて、生渕さんの匂いと、香水の匂いと、タバコの匂いが鼻を掠めた。



「だけど、嫌なものは嫌なんだ。もう、他の男に抱かれるな。」

「…はい。」

「まだ抱いてないのにな…。」



そんな言葉とともに顎に手が添えられて上を向かされた。



「生渕さっ…。」



すぐにキスが降ってきて、それは最初からあまりに激しくて。

嫉妬だったり、やりきれなさだったり、苦しさだったり。そこからはいろいろなものが伝わってきた。
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