あの加藤とあの課長
「…いいね。」

「え?」



本間さんはグラスを煽ってから言った。



「その表情。幸せそう。」

「…はい。」

「陽萌ちゃんとこうして4年になるけど、初めて見たよ、君のそんな顔。」



私今、いったいどんな顔をしているんだろう。逆に、今までどんな顔をしていたんだろう。



「前の彼氏とは、ちゃんと別れたんだよね?」



ふと顔をしかめた本間さんに、私は首を傾げた。

前の彼氏って、直人のこと?



「はい。」

「なら、いいんだけど。」

「何か…?」



思い当たる節が何もなくてそう問いかけると、本間さんは困ったように眉を下げた。

「怒らないでね」と前置きをして言った。



「あの日、楽な方が良いと思って、胸元を少し開けたんだ。」



と言いながら、ブラウスの胸元を開けるジェスチャーをする。

本間さんからしたらどうってことないんだろう、私たちは何度か寝ているし。

私としても気にならないけど。



「そのときに見ちゃったんだよね。」
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