あの加藤とあの課長
久しぶりに来た生渕さんの家。

この前はゆっくりと見回す余裕がなかったけれど、改めて見ると男の人らしい部屋だ。


モノトーンでまとめられた、必要最低限しか物がない部屋。

どことなく私の部屋と似ている。



「風呂入ってこい。」

「生渕さんは?」

「俺はもう入った。」



そう言う生渕さんはスウェット姿だった。車に乗っていたときは気付かなかったけれど。



「じゃあ、お言葉に甘えて。」



鞄の中から大きめのポーチを取り出した。



「…いつも持ち歩いてるのか?」

「…癖で。」



中身はいわゆるお泊まり道具。

コンビニに寄るかと言う生渕さんに持っていると言ったらしかめっ面をされたのだが。



「…今度からは俺の部屋にでも置いておけ。」



彼からしたら他の男の所にはもう行くなということなんだろうけど。

私にしたら、胸を高鳴らせるだけだ。



「…んふふ、はーい♪」

「……。」



何か言いたげだった生渕さんを無視して、私は脱衣場に入った。
< 141 / 474 >

この作品をシェア

pagetop