あの加藤とあの課長

曖昧に香る

目を覚ますと、嗅いだことのない匂いに包まれていた。

……いや、待てよ? 私…、この匂い、知ってる。どこで嗅いだんだっけ。


…あ、思い出した。



「かちょ……。」



そう呟いた自分の声で完全に目が覚めた。



「……あり?」



ここ、どこ? なんで…課長の匂い?

布団に包まって、無遠慮に枕に顔を押し付けて考えた。


そういえば、私昨日、どうしたんだっけ。
なんにも、覚えて、ない。

…嫌な予感がする。


その時、背後で何かが動く気配がした。



「…起きたか。」



聞こえてきた声に、思わず落胆した。

答えなんて分かりきっていたけれど、どうか違って欲しいと思っていたのに。



「はい…。」



渋々返事をすると、私は声の主を振り返った。



「……おはよう、ございます。」



カーテンから差し込む光を受けた彼は、憎たらしいほどかっこいい。

男なんて、慣れてるはずなのに。



「おはよう。」



仕事の時と大差ない挨拶に、あぁ…課長だ、なんて思ったり。

< 18 / 474 >

この作品をシェア

pagetop