あの加藤とあの課長
課長補佐になってからこんなに長い間離れるのは初めて。

それはすなわち、付き合い初めてからこんなに長い間離れるのは初めてということ。


いつの間にか、生渕さんは私の生活の一部になってしまっていた。



「このコーヒーどうしよう…。」



仕方なく流しにあけてしまったけれど、その香りは私の鼻に残ったまま。

(生渕さん…早く帰ってきてよ…。)


もともと連絡なんて取り合わない私たちだから、もちろん連絡は取っていない。



「はぁ…。」



会いたいなんて、思う自分が不思議で堪らない。


そういえば、昨日「大丈夫か?」ってメールがきてたような。

「大丈夫です」とだけ返した記憶がある。


記憶が曖昧ってことは…、足りないということか…?

(どうしちゃったの私…。)


自分の分のココアだけを淹れてオフィスに戻ると、増田ちゃんが声をかけてきた。



「加藤さん、お電話です。」

「分かった。」



デスクにココアを置いて、急いで受話器を取る。



「もしもし、お電話変わりました。営業部の加藤です。」



そう答えると、電話の向こうは無言。



「…もしもし?」

『……。』



そして、間もなく電話は切れた。

無言電話…?
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