あの加藤とあの課長
生渕さんから連絡が来たのは、お泊まり道具の準備を終えたときだった。



『今高速降りた。もうすぐ着くから家の中で待ってろ。』



端的な文章は、もうすぐ会えるんだと私のテンションを高めてくれた。


お泊まり道具の入った鞄と、普段用の鞄を持って、靴まで履いた状態で玄関で待機。

そんな自分を笑ってしまった。



もう、本当は分かってる。
ただ、認めてしまうのが怖いだけ。


生渕さんから下に着いたと連絡が来て、待ってましたと言わんばかりに外に出た。

廊下から下を見ると、エントランスの前に停まった生渕さんの車があった。


はっきり言えば、浮かれてた。

月曜日ぶりの、生渕さんに。



エレベーターで1階に降りてエントランスまで来ると、私はポストの前で立ち止まった。


先週の金曜日から1週間、ポストは放置したままだ。

おかげさまで、相も変わらず白い封筒がポストいっぱいに詰め込まれていた。


(そろそろどうにかしないと…。)



そう思いながら振り返ったとき、視界に1人の男が飛び込んできた。

エントランスの外からは死角になるそこに、男はいた。


逃げなきゃ。

本能的にそう思った。
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