あの加藤とあの課長
「生渕さん…。」

「陽萌…。」



ポツリ名前を呼ぶと、生渕さんは目を見開いて驚きながら私を呼んだ。



「私、生きてる…。」

「当たり前だ…。」



私の手をきつく握り直した生渕さんは、手と唇をふるふると震わせた。

その瞳はゆらゆらと揺れている。



「よかっ…!」



生渕さんは握り締めた私の手に額をつけると、肩を震わせた。



「よかった…!」



手が濡れるような感覚がある。



「生渕さん…、ありがとう…。」

「っ…。」



生渕さんにつられて、私も涙を流した。

死んでもいいなんて、思ってごめんなさい。私、生きててよかった。


この温もりが、愛おしい。



「生渕さん…、好きです。」



改めてそう言うと、生渕さんは泣き腫らした瞳で私を見つめ、笑った。



「遅い。」

「ごめんなさい。」



つられて笑った私に、生渕さんはそっと口づけた。



「呼び方も、違う。」



久しぶりに見た意地悪な笑みに、懐かしさと共に安心が溢れる。



「…源。」
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