あの加藤とあの課長
翌日、警察から事情聴取を受けた。



「この男に見覚えは?」



警察官に見せられた写真を見て、私は過去の記憶をたどっていた。

見たことは…ある。



「……あ。」



思い出した。



「どういったご関係で?」

「…一夜限りの…関係…です。」



余りの気まずさに、私は目をそらしながら答えた。

警察官も驚きを隠せないようだ。



「これに懲りて、男癖の悪さを直さすことですね。」



会社のお昼休みを利用してお見舞いに来てくれた増田ちゃんに釘を刺された。

今日は月曜日なのです。



「直すも何も…、今は源だけだし…。」



モゴモゴ言う私に、増田ちゃんは呆れたように笑った。

源は今日は有休を使って仕事を休んでくれていて、今は1度家に帰っていた。



「課長、まだ病院に戻ってこないですよね?」

「うん、たぶん。」

「だったら言いますけど…、加藤さん、はっきり言って遅いです。」

「ええ…?」



何がだと目をパチクリさせていると、増田ちゃんは溜め息を1つ溢した。



「加藤さん自覚するって言うか、素直になるって言うか…、そういうの、遅いです。」

「はぁ…。」

「課長、ずっと待ってたんですからね。」



そっか…、よくよく考えてみれば、増田ちゃんは源の元カノ。

この関係も可笑しなものだ。
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