あの加藤とあの課長
「…何を聞いたんだ?」



眉をハの字にして困った表情をしながらも、その瞳は優しさに溢れていた。


目は口ほどにものを言うっていうけど、源はまさにその典型だと思う。

表情よりも目に出ちゃうタイプだね。



「源の片想い歴が結構長いって話。ねぇ、いつから私のこと好きだったの?」

「……。」

「そういえば前にさ、私が敬語と“生渕さん”って呼び方卒業したら教えてくれるって言ってたよね。」



ニヤニヤしながら尋ねると、源はさすがに顔をしかめた。

だけど、聞きたい。すっごく興味ある!



「…かなり前からだ。」



それだけ言って、そっぽを向いてしまった。



「…かなり前って、いつ?」

「…うるさいぞ。」

「源ーえ。」



なんで源ってリアクションの仕方が可愛いんだろう。

いちいち乙女心をくすぐるよね。



「お前、治ったら覚えとけよ?」

「…やだ。」



バレてたか…。

怪我人の今なら仕返しされることもないと、少し調子に乗っていたのに。



「気になる…気になるよー、源ーえ。」



私がぐちぐち言っていると、源はふと何かを思い出したように椅子に座り直した。
< 198 / 474 >

この作品をシェア

pagetop