あの加藤とあの課長
源を抱き締めると、源は首だけで私を振り返って緩やかに私の頭を撫でた。



「私はね、ずっと転勤族だったの。大学生になって家を出るまで、ずっと。」



源が話してくれたから…なんだと思う。

自然と口から言葉が零れ落ちた。



「だから全然友達もできなくて…、いっつも煌にくっついてた。」

「兄貴がシスコンなのはそれでか…。」

「うん、たぶん。」



友達ができなくて、煌にくっついて回って、悪いことは全部教わった。

友達ができてもこの顔だから、すぐに恋愛関係のトラブルになって…駄目だった。


だから敏ちゃんが友達って言ってくれたときすごく嬉しくて…。




「そっか。」



男に逃げていた私は、男がいなくなったら本当に独りぼっちになっちゃうから。

それが嫌で、気付いたらされるがままになってたのかも。



「源、食べ終わった食器ちょうだい。」

「ん。」



片付けをしながら少しばかり余韻に浸る。


私たちは、似た者同士なんだろうな、きっと。

足りないものを補うために求められるがままになって、いつの間にか大事なものを見失った。


求めていたのは快楽じゃなかった。

互いに、愛と、安らぎを求めてた。
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