あの加藤とあの課長
私の家に行くと、すでに敏ちゃんと煌がいた。



「あれ、晋ちゃんは?」

「今泉さんは寝坊だってさ。」

「ふーん…。」



晋ちゃんは放っておいて、荷物を借りてきたトラックに詰め込んだ。



「ベッドはないし、本棚もないし…。」



敏ちゃんが段ボールのなくなった部屋を見渡す。



「あるのはテレビとか冷蔵庫とか生活必需品的家電…。」

「あとローテーブルだな。」



呆然とした敏ちゃんと、軽く呆れ返った煌が、私をジッと見た。



「…だって、煌と住んでた家を出て以来ずっといろんな所を転々としてたから…。」

「それは同棲ってことか?」

「うん。」



(……ん?)

今私、誰に返事した…?


嫌な予感がして恐る恐る振り返ると、そこに立っていたのは勤務中並みに無表情の源。


げげげ!



「…まぁ、昔の話だしな。」



無表情のまま私の横を通りすぎていった。

こ、怖い…。



「お前…、もう少し上手くやれよな…。」



煌に思いっ切り溜め息を吐かれた。

「なんだとう!?」と言い返したいところだけど、残念ながらそんなこともできない。



「陽萌って仕事はできるけど、その辺てんでだめよねー。」

「…否定できません。」
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