あの加藤とあの課長
「俺がいる。」



頭の後ろから聞こえた声に、ホッとする私がいた。



「俺がいるから、大丈夫だ。」

「…うん。」



身を捩って振り返ると、源は笑って私の涙を拭った。

結局、ダメだったみたい。



「そういえば、今さらだけど陽萌の家初めて入ったな。」

「そうだね。」



顔を見合わせて笑う。


同棲の繋ぎでしかないからと物を少なくしていたつもりだったけど…。

実際は、この虚無感の軽減のためだったのかも。



「行くか、俺の家に。」

「違うでしょ、私たちの家でしょ。」

「…そうだな。」



少し顔を見合わせて、触れるだけのキスを繰り返した。




「大家さん来ちゃう。」

「来ない。」

「来るって!」



私の理性も、反論もろとも奪い去ろうとする。



「今日から楽しみだな。」



そう笑う源が、なんとなく怖かった。
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