あの加藤とあの課長
恐らく課長のものであろうパーカーを着た私は、下着もしっかりと身に付けているもの。起きた時の体の感じもいつも通りだし。

何よりも。



「今は、増田ちゃんがいますもんね。」



課長は顔がいい。いや、恐らく体もいい。
そんな彼がモテないはずもなく。

去るもの追わず、来るもの拒まず。


課長は30という歳にも関わらず、未だに好き勝手やっているようだ。

彼なりにルールはあるようだけど。



「……。」



彼女という存在がいる間は他に手を出すこともない。

1人に絞って留めておく。
それが課長のルール。


1度に複数に手を出さないのは利口な選択だと思う。



「何黙ってるんですか。肯定しましょうよ。」



ちなみに、この程度の課長の女事情についてはうちの社内では常識だ。

でも私が思うに、この人は誰のことも、好きじゃない。



「振った。」

「……え?」



去るもの追わず、来るもの拒まず。
自分から手放すことは、早々ない。

自分から求めることは、もっとない。



「欲しい子が、できた。」



前を向いたまま、こちらに視線を寄越すことなく課長は言った。

少し補足。
自分から求めることは、決して、ない。



「だから、もう止めた。」



少し訂正。
自分から求めることは、決して、なかった、今までは。
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