あの加藤とあの課長

すぐに源にその話をしたかったけれど、勤務時間中にそんな話をするわけにもいかなくて。

その機会が訪れたのはお昼休みだった。



「陽萌、源、ちょっと来なさい！」



お昼休みになるやいなや、オフィスまでやって来た敏ちゃんに連行されるように救護室に連れてこられた。



「なんだよ、敏。」



中に入るなり救護室の鍵を閉めた敏ちゃんに源がそう問うと、敏ちゃんは顔をしかめた。



「やられたわね…。」



その一言で、出向のことだと分かった。


そういえば、源にはまだこの話はしていない。

部長には、私から言うからと源に言わないでもらっているから。



「…何の話だ？」



眉間に皺を寄せる源を見て、敏ちゃん驚いたように言った。



「源…知らないの？」

「敏ちゃん、まだ言ってないの。帰ってからでもいいかと思って…。」

「アンタねぇ…。今すぐ言いなさい！」



そんな私たちの会話を聞いて、源はますます眉間に皺を寄せるばかり。



「…今朝、部長に言われたんだけど。」



源の顔を見れなくて俯いた私は、眼下にある源の革靴の先端を眺めていた。



「…大阪への出向の内示が出たの…。」

「出向…？」