あの加藤とあの課長
あの一件以来、専務と常務は降格になっている。

私が録画していた映像が決め手になったから、私は恨みを買ってしまったらしい。



「アタシがもっと注意しとくべきだったわね…。」

「ううん、敏ちゃんに何もなければ、私はそれでいいよ。」

「アタシには社長の後ろ楯があるから平気よー!」



なんて笑うから、つられて私まで笑ってしまった。



「アタシご飯行ってくるわ。2人は…まぁ、ゆっくりしてなさい。」



私たちに微笑みかけて、敏ちゃんは救護室を出ていった。

伺うように源を見ると、源はただ床を見つめていた。その表情からは何も読み取れない。



「…源?」

「…くそ。」



忌々しげに呟くと、源は窓辺に立って窓を開けた。

どうすることもできずにいる私を他所に、源は煙草を1本取り出して火をつけた。



「…人事部長の息子の話は知ってた。だけど、そこまで気にもしていなかった…。」



深く煙を吸い込むと、それをゆっくりと吐き出した。



「くそ。」



いつもなら臭いがつくからと絶対に吸わない煙草を吸うなんて。

以前、煙草を気付けだと言っていたことを思い出して、私はただ黙っていた。


こういうとき、どうしていいか分からない。


携帯用の灰皿で煙草を揉み消すと、源はやっと私を見た。
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