あの加藤とあの課長
ちゃんと帰ってくるから。
だから、待ってて。


ふと、源の瞳が切なげに揺れているのに気が付いて。

源の頬に手を添えて、少し背伸びをしてその唇を奪った。


何度も繰り返すうち、主導権は源に移り、それは一気に深くなった。



「ふっ…、ん。」




体の力が抜けて崩れそうになる私を抱く腕に力を込めて支える。

頭がボーッとしてきたころ、やっと解放された。



「…ここ、会社…。」



息も絶え絶えに訴えると、源は「危なかった」って悪戯っ子のように笑った。

そんな顔をされたら、許してしまう。




それから少しして、敏ちゃんが戻ってきた。



「きゃー! 煙草の臭いがする! アンタ煙草吸ったわね!?」

「あぁ…、悪い。」

「ここ救護室よ!? 分かってんの!?」

「悪いな。」



そんな2人の会話が可笑しくて笑みが溢れた。

源が敏ちゃんに渡された消臭剤で消臭を始めたのを見て、敏ちゃんは私を見た。



「…大丈夫そうね。」

「…うん、ありがとう。」



そんな敏ちゃんの気遣いが嬉しくて、敏ちゃんにギューッと抱きついた。



「敏ちゃん大好き!」

「アタシもよー!」



そんな私たちを、源は困ったように笑いながら見ていた。
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