あの加藤とあの課長
顔を上げた源は困り顔をしているけれど、焦っているようにも見えた。



「どうしたの?」



スリッパをパタパタ鳴らしながら源のもとに行くと、源はより一層困り顔になった。

ダンボールを見ると、何やら貼り紙が。



『あなたの子です。お願いします。』



ものすごい癖字で書かれたそれに眉をしかめると、源は私の手を握った。



「…断じてそんなことはない。」

「うん、分かってる。ただ、癖字読みにくすぎるなって思っただけだから。」



と笑うと、私の返答が可笑しかったのか、源も釣られるように笑った。

だって、源はそんなミスをしないだろうし。


その時、ダンボールの壁をカリカリと引っ掻くような音がした。



「ひっ…!」



驚いて引っ付いた私に笑いかけると、源はダンボールの前にしゃがみこんだ。



「…開けるぞ?」

「う、うん。」



ダンボールの蓋はステッカー1枚で止められているだけだったから、源はアッサリとそれを開いた。


ステッカーといい、貼り紙に使用された紙といいあの癖字といい…、随分な女の趣味をなさっていたようだ。

なんて軽く引きながら源の脇にしゃがみこんだ。

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