あの加藤とあの課長
ダンボールの中に入っていた綿をすべて出し終えると、そこにポーリッシュを戻した。

うさぎは何でも食べちゃうから。



「…にしても、綿ピンクって…趣味悪。」



ポツリと呟いた言葉はいつの間にか後ろに立っていた源の耳に届いていたようで。

「あ」と思い付いたように声を漏らした。



「アイツだ…。」

「元カノ?」

「あぁ、付き合ってる間別れたくてたまらなかった奴だ。」

「源最低…。」

「仕方ねぇだろ、流されるままとはいえ、会うたび吐き気がするくらいだったんだから。」



あまりの言い様に笑うと、源も笑った。

来るもの拒まず去るもの追わずもそういう結果になるんだね。



「ねぇ、この子、飼ってもいいっ?」



ダンボールの縁に手をかけてダンボールを覗き込みながら尋ねると、源は少し考える素振りを見せた。



「…お前が引っ越さなきゃ速決なんだが…。」

「…私がいなくてもこの子いたら寂しくなさそうなのに。ねー?」



言葉を返してはくれないうさぎに問いかけると、源は苦笑した。
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