あの加藤とあの課長
ソファに座りプリンを膝の上に乗せると、私のお腹に顔を擦り寄せるプリン。

やがて、疲れたのか膝の上で眠ってしまった。



「止めたのか?」



タオルで髪を拭きながらリビングに戻ってきた源はそう私に訊ねた。



「寝ちゃったの。」

「疲れたか。」



私の隣に腰掛けて、膝の上のプリンを覗き込んだ。

私がそっと頭から体にかけて撫でると、目を細めてそれを眺める源。



「…なんか、母親みてえだな。」

「そう?」

「俺は母親の記憶とか全然ないけど…、たぶんそうなんだろうな。」

「…そっか。」



ダンボールの中に適当に小さなタオルを敷いて、プリンをそっと寝かせた。



「あ、夕飯!」

「あ。」



幸い、ケーキは冷蔵庫に入れておいた。

けれど、そのままになっていた料理は冷めきってしまった。



「ど忘れして風呂まで入った…俺…。」

「あははっ。」



源も少なからず動揺していたんだろう。



「そういえば、腹減った。」

「食べよっか、冷めちゃったけど。」

「冷めても旨いから大丈夫だ。」



なんて甘いことを言ってくれちゃって、源はまた私を惚れさせる。
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