あの加藤とあの課長
「源っ、ちょっと早いけどメリークリスマス。」



それを源に差し出すと、源はそれを受け取って嬉しそうに笑った。




「サンキュ。開けていいか?」

「うんっ。」



プレゼントは、ネクタイとタイピンにした。


淡いブルーに、少しだけ淡いピンクの線が入ったストライプのネクタイ。

なんとなく、見た瞬間源っぽいと思った。



「大事に使う。」



おもむろに私を抱き締めてキスを降らせる源に酔いしれていると、手に違和感を感じた。

(何…?)


源から解放されて手を見た私は、驚いて何も言えなかった。



「男避け。」

「これ…。」

「本当は他のにするつもりだったけど、出向決まったからな。」

「……ありがとう。」



左手薬指にはまるそれをギュッと握り締めて、私は俯いた。



「安物だけどな。」



ただふるふると首を横に振った。

安物なんて、関係ない。私にとってはとても価値のあるものだから。



「は、じめ…。」



鼻がツンとしたと思った瞬間、溢れだした涙を隠しもせずに源に抱きついた。



「陽萌…?」



優しく名前を読んで、そっと背中を撫でてくれる。



「やだよぉ…。」



言わないと決めていたけれど、今だけ。
これが、最初で最後だから。
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