あの加藤とあの課長
「増田ちゃんってさ、振られたの?」

「そうらしいよ。」



無理矢理話題を変えてみたものの、やはり大して変わらなかった。



「課長、相当本気なんだね。」

「でもさ、本気になるの遅いよ。」



「もう30だよ?」と続ける晋ちゃんに苦笑いを返した。



「どんな人なんだろう、課長が本気になった人って。」



他部署かもしれないし、他社かもしれない。
年上かもしれないし、年下かも。あ、同い年?



「気になるなー。」



ボーッと宙を眺めながら呟くと、明らさまに晋ちゃんが顔をしかめる。



「……僕は、なんとなく検討ついてるけどね。」

「嘘!」

「なんとなくだけどさ。」

「えーっ、誰々!? 私知ってる!?」

「教えないー。」



それから、晋ちゃんは何を訊いてももう答えてはくれなかった。

もったいぶらずに教えてくれればいいのに。




「加藤。」

「はい。」



昼休みを終えると、課長に呼ばれた。



「来週のプレゼン、考えておけ。」

「はい。」



プレゼン、か。
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