あの加藤とあの課長
皆に別れを告げて、源と2人改札を潜った。

新幹線のホームに出ると新幹線が止まっているのが見えて、急に現実味が増してきた。



「…あと、10分くらいかぁ。」



指定席なので並ぶ必要もなく、のんびりとホームを歩く。


足が鉛みたいに重い。

なのに口から溢れる言葉も、進み続ける足も、それを欠片も感じさせない。



「…着いたら、連絡寄越せよ。」

「うん。」

「…飯、ちゃんと食えよ。」

「源こそ。」

「お前よりはまともな食生活してる。」



顔を見合わせて笑うと、新幹線の出発を告げる音が鳴り響いた。



「…もう?」



呆然と呟くと、源がそっと手を離した。

不意に離れた温もりが恋しくて、手がそれを追いそうになるのをなんとか止めた。


源は私の肩を抱いて強い力で私を引き寄せると、触れるだけのキスをした。

込み上げてきた涙が溢れる前に、新幹線の中に押し込まれる。



「源…!」



名前を呼んだ瞬間ドアが閉まった。

寂しそうに、込み上げるものを堪えるかのように微笑む源。


私は窓に張り付いて、それをずっと眺めていた。


車内なのに、昇降口の側は少し寒かった。
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