あの加藤とあの課長
「あ、おはよ…。」



数日経ったある日、玄関のドアを開けて廊下に出ると、丁度出てきた恵也と鉢合わせた。



「おっす。」



今の恵也に、あの頃の面影はない。元々根は真面目だったから。

今では爽やかな好青年。



「なんや疲れてへん?」

「え…。」



顔を覗き込んできた恵也に呆気に取られる。


実は今朝から生理になっちゃって、例の如く生理痛が辛い。

今回は風邪とのWパンチじゃないのが救い。



「あ、もしかしてあれか、生理痛か。」

「あ、うん…。」

「車乗ってくか?」

「恵也って電車通じゃ…。」

「車持っとんねん。たまーにしか乗れへんけどな。」



有無を言わさず先を歩く恵也を、ただ呆然と見つめた。


気付いてくれた。
ていうか、覚えててくれた。

意外なような、なんというか。



「早よせえ! 置いてくでー!」

「う、うん…。」



階段の側で待つ恵也の元に急いで向かった。



「あ、急がしてしもた、堪忍な。」

「なんとか大丈夫…。」



恵也は4人兄弟の長男だからすごく面倒見が良かったんだ。

兄貴体質の恵也は甘えさせてくれるから、完全な妹体質の私は恵也に甘えきっていたっけ。
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