あの加藤とあの課長
「あの頃、別れてへんかったら…。」

「…?」

「…俺ら、今頃どうなってたんやろな。」



ふっと笑った恵也は、どこか寂しそうで。私はそれに曖昧に返すことしかできなかった。

どうなってた、か…。


そしたら、今も仲良くやってたのかな…。




「あれ、2人で一緒に出勤?」



オフィスに入ると、柔らかいけれどどこか刺のある笑顔を浮かべた高山課長がいた。

隣の恵也も負けじと笑い返す。



「家が隣なもんですから。」

「俺も社宅にすればよかったかなー。」



微かながらに、険悪なものを感じるような…。


課長は社宅ではなくて高級なマンションに住んでいるみたいだ。

なぜだか昨日しつこく説明された。



「陽萌、何か飲むか?」

「あ、私淹れてくる…。」

「いいから、座っとき。紅茶でええな?」

「……はい。」



有無を言わさぬ恵也に、私は大人しくデスクについた。


コーヒー飲めないの、覚えてる。普段はココアなのも、たぶん。

生理中は紅茶なのも、たぶん。



「ほれ。」

「ありがとう…。」



紅茶を受け取ってそれを啜っていると、鋭い視線を感じた。

顔を上げると、女性社員と目が合った。
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