あの加藤とあの課長
壁伝いにその場にしゃがみ込むと、切られた部分に触れた。


この長さならセミロングくらいで済むかな…。

なんて呑気に考えている私は昔を思いだし、そして昔の自分に返っていた。


切られた部分を隠すために、ポニーテールにしていた髪をお団子にしてトイレを出た。

トイレから出てすぐの壁に、恵也が腕を組んで寄りかかっていた。



「…髪。」

「……。」

「切られたんか?」



私は頷くこともせず、ただ廊下の先を見つめていた。

なぜだか、肯定したくなかった。



「…さっきの女子社員たちに、やられたんやろ。」

「…いつからそこにいたの?」

「帰ろ思て、その前にトイレに寄りに来たんや。したら、なんか聞こえてな。」

「…そう。」



そのまま歩き出そうとすると、恵也が私の手首を掴んだ。



「美容室、行くで。」

「…でも。」



「縛って隠せるから。」という言葉は、恵也の有無を言わさぬ瞳を前に消えた。


なんか、また、懐かしい。

無性に泣きたくなって、俯いたまま唇を噛み締めた。
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